マイホームの選択肢として「中古住宅+リフォーム」を検討する方が増えています。新築より費用を抑えやすく、立地条件の良いエリアに住める可能性もあります。しかし一方で、建物の劣化や見えない不具合によって「想定外の出費」や「リフォームできない制約」が生じるケースも少なくありません。
本記事では、中古住宅を購入してリフォームする際に押さえておくべき10の注意点をわかりやすく解説します。さらに、素人目では判断できない部分をどう確認すれば良いのか、実際の行動につながるアドバイスもお伝えします。
今回も本記事では、1級建築施工管理技士の現場監督・福田がポイントを詳しく解説します。
中古住宅を買ってリフォームする魅力とリスク
中古住宅を購入してリフォームする最大の魅力は「費用」と「立地」です。新築より安く買えて、人気エリアでも選択肢が広がります。ただし、修繕費や耐震補強費がかさみ、結局は新築同等の金額になったという失敗談もあります。
大切なのは「安く買うこと」よりも、「将来の維持費を含めてトータルでお得かどうか」を考えることです。
築年数だけでは判断できない!劣化状況のチェックポイント
築30年でもしっかり手入れされている家もあれば、築10年でも雨漏りがある家もあります。
外壁・屋根・床下・配管など、実際の劣化状態をチェックすることが大切です。
現場監督 福田からのアドバイス①
中古住宅は見た目では判断しにくい部分が多いため、購入前にプロに現地を見てもらうのがおすすめです。施工をお願いするリフォーム会社や建築士に同行してもらえば、劣化箇所や修繕費用の目安をその場で相談できます。
※第三者による住宅診断サービス(ホームインスペクション)もありますが、まずは依頼先の工務店に相談してみると安心です。
構造部分(基礎・柱・屋根)の劣化は必ず確認
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内装はリフォームで見違えるほど変えられますが、基礎や柱などの構造部分が劣化していると補修費用が高額になります。
シロアリ被害や基礎のひび割れは要注意です。
水回り(キッチン・浴室・トイレ)の交換は想定しておく
<当社施工事例>
中古住宅では水回り設備の寿命が過ぎていることが多いため、特に注意が必要です。これらを予算に含めておいてくださいね。
【交換費用の目安】
主な項目 | 金額の目安 |
キッチン | 100~150万円 |
浴室 | 80~150万円 |
トイレ | 20~40万円 |
断熱性能・窓サッシの古さが光熱費に直結する
昔の住宅は断熱性能が低いため、冷暖房費が高くつきます。
サッシ交換や内窓設置で50万~200万円程度の費用がかかりますが、長期的には光熱費を抑えられますよ。
現場監督 福田からのアドバイス②
断熱改修は後回しにされがちですが、快適性とランニングコストに直結します。リフォーム時に同時に検討するのがベストです。
リフォーム費用は“想定外”に膨らみやすい!予算の立て方
リフォーム費用は見積もりより2~3割増しになることもあります。解体してみたら配管が腐食していたなど、開けてみてわかる不具合が多いためです。
総予算は「物件価格+リフォーム費用+予備費(1~2割)」で考えるのが安心です。
住宅ローンとリフォームローンをどう組み合わせるか
金融機関によっては「住宅ローン+リフォーム費用」をまとめて借りられる場合があります。
金利は住宅ローンの方が低いため、なるべく一本化する方がお得です。
リフォームできない制約に注意(構造・法規・管理規約)
木造住宅なら間取り変更しやすいですが、マンションや鉄筋コンクリート造は構造上の制約が多いです。また、マンションでは管理規約によって「床材の種類」「工事時間」に制限があることもあります。
以下の記事で「マンションならではの注意点」を紹介しています。
<関連記事>
放置は危険!マンションの結露がもたらす5つの悪影響と対策リフォーム
信頼できる専門家・施工会社の選び方
中古住宅は「隠れた劣化」が多いため、経験豊富な施工会社を選ぶことが重要です。相見積もりを取り、診断や提案の内容を比較して判断してください。
以下の記事では、「安心できる工務店・リフォーム会社の見極め方」も紹介しています。
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その見積もり、本当に適正?リフォーム費用で損しないための基礎知識
現場監督 福田からのアドバイス③
“安さだけ”で業者を選ぶのは危険です。調査の丁寧さ、説明のわかりやすさも判断基準にしてください。
物件探しの段階でリフォーム前提で見るべきチェックリスト
中古住宅を購入する際は、「立地や価格」だけに目を奪われると失敗につながります。
リフォーム可能かどうかを見極めるために、以下のチェックリストを持って現地を確認することをおすすめします。
【チェックリスト】
チェック項目 | 主な内容 | チェック欄 |
1. 外壁・屋根の状態 | ・ひび割れ、塗装の剥がれ、錆び、水染みがないか。 屋根材が古いスレートやトタンの場合、葺き替えや塗装が必要になる可能性大。 外壁・屋根の改修は80万~200万円ほどかかるケースが多い。 | □ |
2. 基礎・構造の劣化 | ・基礎にクラック(大きなひび割れ)がないか。 ・床が傾いていないか(ビー玉を転がすとわかりやすい)。 ・シロアリ被害や腐朽の跡がないか。 これらの修繕は数十万円~100万円以上かかる可能性あり。 | □ |
3. 床下・配管の状態 | ・床下にカビ臭や湿気がこもっていないか。 配管が鉄管や鉛管など古い素材だと交換必須。 配管更新には50万~150万円かかる場合も。 | □ |
4. 水回り設備の老朽化 | ・キッチン・浴室・トイレ・洗面台の使用年数を確認。 20年以上経過していれば交換前提で考える。 | □ |
5. 断熱・窓の性能 | ・アルミサッシではないか。 特にアルミサッシ+シングルガラスの場合は冬は結露や寒さが深刻です。 内窓や樹脂サッシの交換で50万~200万円は見込む必要あり。 | □ |
6. 耐震性 | ・1981年以前(旧耐震基準)に建てられた家ではないか。 その場合はは耐震補強が必須。耐震リフォームは100万~250万円かかることも。 | □ |
7. 増築・改築履歴の有無 | ・違法な増築ではないか。 もし違法性があるとリフォーム不可や住宅ローンが組めないケースがある。 固定資産税台帳や登記簿と現況を照合することが大切。 | □ |
8. 日当たり・通風 | ・東西南北の立地を確認。特に東や西に大きな窓や開口部がないか。 立地環境はリフォームでは変えられないため、最初の段階で確認必須。 | □ |
9. 法規制・地域制限 | ・再建築不可の土地ではないか。該当する場合は建て替えができない。 防火地域・準防火地域ではリフォーム時に仕様制限がかかることも。 | □ |
10. 建て替えを視野に入れる判断 | ・上記のチェックで劣化が総合的にどうか確認。 ひどい場合は「リフォームではなく建て替え」を検討した方が長期的に安心です。 特に「耐震性・基礎・配管・屋根外壁すべてNG」の場合、修繕費が1000万円以上かかり、新築と大差なくなることもあります。 | □ |
現場監督 福田からのアドバイス④
内装の綺麗さに惑わされず、必ず“外回り・構造・設備”を優先的に見てください。どうしても判断が難しい場合は、物件探しの段階から建築士やリフォーム業者に同行してもらうのがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 築何年までならリフォームしても安心ですか?
一概には言えません。築40年でもしっかり手入れされていればリフォーム可能ですが、築20年でも劣化が進んでいる場合もあります。まずはリフォーム会社や建築士など、専門家に状態を見てもらうのがおすすめです。
Q2. リフォームと建て替え、どちらがお得ですか?
A. 修繕費が新築並みにかかる場合は建て替えがお得です。ただし立地や土地条件が良いなら、リフォームで価値を高めるのも選択肢です。
Q3. 中古+リフォームと新築、総額はどのくらい違いますか?
A. 一般的に中古+リフォームは新築より1~2割安いケースが多いですが、劣化の程度によっては逆転することもあります。
Q4. 予算オーバーを避けるコツは?
A. 「物件価格の7割以内で購入、残りをリフォーム費用に充てる」と考えると安全です。
まとめ
中古住宅を買ってリフォームするのは、うまくいけば新築より費用を抑えつつ理想の住まいを手に入れるチャンスです。ですが、見えない劣化や想定外の費用が最大の落とし穴になります。
購入を検討する際は、必ず専門家に診断を依頼し、リフォーム前提で総予算をシミュレーションしてください。場合によっては建て替えという選択肢も視野に入れて検討すると安心です。
中古+リフォームは決して“安い”だけの選択肢ではありません。
大切なのは“長く安心して暮らせる家になるかどうか”。
その視点でぜひ検討してみてくださいね。