はじめに|どちらが「正解」ではなく、どちらが「自分に合うか」
家が古くなってくると、誰もが一度は考えるのが「建て替えるべきか、それともリフォームで直すべきか」という悩みです。 「思い出のある家を残したいけれど、構造が心配」「せっかく直すなら新しくしたい」――どちらにも魅力と不安があります。
この記事では、費用・工期・構造・暮らしの変化という4つの視点から、建て替えとリフォームの違いを整理し、判断の目安を紹介します。 今回も本記事では、1級建築施工管理技士の現場監督・福田がポイントを詳しく解説します。
まず知っておきたい「建て替え」と「リフォーム」の違い
リフォームは、今ある建物を活かして改修する工事です。 一方、建て替えは建物を一度取り壊し、新築として一から建て直す方法です。 リフォームは「使える部分を活かす」、建て替えは「ゼロから設計し直す」という考え方の違いがあります。 費用や工期だけでなく、住宅ローンや税制、補助金の対象も異なるため、最初に整理しておくことが大切です。
現場監督 福田からのアドバイス①
まず見るべきは「家の基礎」と「柱・梁などの構造体」。
これがしっかりしていれば、リフォームでも驚くほど多くの改善ができます。
一方で、構造の傷みが深い場合は、無理に直すより建て替えの方が結果的に安心です。
費用・工期の比較で見る「現実的なライン」
リフォームと建て替えは、金額の幅が大きく異なります。
リフォームは内容により数十万円から1,500万円程度が目安。 建て替えは2,000万〜4,000万円前後が一般的です。 工期もリフォームで1〜3か月前後、建て替えでは4〜8か月前後が目安です。
また、建て替えでは解体費用・仮住まい・引っ越しなどの諸経費がかかる点も見落としがち。 リフォームでも、断熱や間取り変更を含む大規模改修なら2,000万円を超えるケースもあります。こうした“見えない費用”を含めて比較すると、単純に「建て替えの方が高い」とは言い切れません。
リフォームが向いているケース
構造がしっかりしており、間取りや広さが大きく変わらない家は、リフォームの方が効率的です。
キッチンやお風呂などの設備更新、内装の刷新、収納の追加など、暮らしやすさを中心に整えることができます。
最近は窓の性能や、断熱・耐震リフォームの技術も進み、古い家でも快適さを大幅に向上させることが可能です。
ただし、リフォームでは工事の規模によって事前の片付けや荷物移動の手間が発生します。
住みながら工事を行う場合は、工事範囲を空けておくための片付けや、荷物の一時保管場所を考えておくとスムーズです。
また、フルリフォームで一度引っ越す場合には、不必要な物を廃棄する作業も必要になります。
この“整理・処分”の工程は意外と時間がかかり、多くの方が大変だと感じる部分です。
早めに段ボールや処分先を準備しておくと、工事直前の慌ただしさを避けられます。
一部改装の場合は、大きな家具の移動はリフォーム会社側で対応できることも多いですが、
食器棚やキッチンの中のような割れ物・破損しやすい物は、事前に施主側で移動しておくと安心です。
安全に工事を進めるための準備として、「どの範囲を空けておくべきか」や「どこまで業者が動かしてくれるのか」を、打ち合わせの段階で確認しておいてくださいね。
現場監督 福田からのアドバイス②
リフォームを考えるときは、「やりたいこと」より「直すべきこと」から優先してください。
目に見えない部分(雨漏り・配管・床下など)を先に整えると、結果的に長く安心して住めますよ。
建て替えが向いているケース
<当社施工事例>
家の構造が劣化している場合や、旧耐震基準(1981年以前)の建物は、建て替えをおすすめします。 また、間取りを大幅に変えたい、二世帯住宅にしたい、バリアフリー化を徹底したいなど、 “家全体を新しくしたい”という場合も、建て替えの方が柔軟に対応できます。
ただし、建て替えは建築確認申請やセットバックなどの法的制約を受ける場合もあるため、 事前に確認が必要です。
判断が難しいときの中間の選択肢「スケルトンリフォーム」
「古いけれど、全部壊すのはもったいない」 そんなときに検討できるのが、スケルトンリフォームです。
柱や基礎を残し、内部をほぼ新築同様に造り変える方法で、外観や間取りも大きく変えられます。 費用は建て替えより1〜2割ほど抑えられるケースもありますが、 先ほどもありました旧耐震基準(1981年以前)の建物や、構造の状態次第では施工できない場合もあります。
建て替えとリフォーム、どちらの会社に相談すべき?
新築専門の会社は当然、建て替えをすすめやすく、 リフォーム会社はリフォームを前提に話が進みがちです。
このため、新築とリフォームの両方を手がけている会社に相談することももう一つの選択肢です。
ただし、新築とリフォームの両方を扱う会社であっても、 利益の大きい建て替えに誘導されるのでは…と不安に感じる方もいるでしょう。
実際、建築の世界では、工事規模が大きいほど会社の利益が増える傾向があります。 だからこそ、「中立に判断してもらう」ためには、判断の根拠が見える説明をしっかりとおこなってもらえるかも会社選びの重要なポイントです。
たとえば、
●今の家の構造・基礎の状態 ●耐震や断熱性能の現状 ●補修で直せる範囲と、直せない範囲 ●それぞれの費用と工期の比較 |
こうした情報を、図面や写真、見積書で丁寧に共有してもらうことで、 “どちらの会社を選ぶべきか”を施主自身が納得して判断することができます。
建て替えでもリフォームでも、 「判断の材料をオープンに共有してくれる会社」を選ぶこと。 それが、納得のいく選択をするための、いちばん確実な方法です。
見積もり比較と検討のポイント
見積もりを比べるときは、「金額」だけに注目せず、 どこまで含まれているか・何が別途になるかを明確にしておくことが大切です。
リフォームでは、解体後に追加の修繕が必要になることも多く、 「追加費用がどんな条件で発生するか」を確認しておくと、トラブルを防げます。
現場監督 福田からのアドバイス③
見積書を見るときは、“含まれている範囲”をまずはチェックしてください。
「一式」で表記されていても、条件や面積が分かるようになっていれば安心です。
なお、「一式」すべてが悪いわけではなく、リフォーム特有の「現場の不確定要素」に対応するためにあえて使われることがあります。山中木材の見積もりでも、工事内容は記載しますが、平米(㎡)数は一式で記載しています。分からないときは、「この一式、どこまで入っていますか?」と遠慮なく聞いてください。
将来を見据えた判断:家族構成とライフプラン
<当社施工事例>
子どもが独立したり、老後の生活を考えたりする時期には、 大きな家を持て余すよりも「コンパクトに建て替える」選択もあります。 延床20〜25坪ほどの平屋や、必要最低限の間取りで暮らす方も増えています。
「守る家」から「暮らしを楽しむ家」へ――
どんな暮らし方をしたいかを出発点に考えることが、後悔しない選択につながります。
FAQ(よくある質問)
Q1. リフォームより建て替えの方が長持ちしますか?
A.構造から新しくできるため、建て替えの方が寿命は長くなります。ただし、しっかり補修したリフォームでも30年以上快適に住めるケースは多くあります。
Q2. 補助金はどちらが有利ですか?
A.断熱改修や耐震補強など、性能向上を伴うリフォームには多くの補助金があります。建て替えの場合は条件が限られるため、併用できる制度を必ず確認しましょう。
Q3. 仮住まいは必要ですか?
A.建て替えでは必須、リフォームは工事内容によります。水回り全体を改修する場合は、1〜2か月の仮住まいを想定しておくと安心です。
Q4. スケルトンリフォームはどんな家でも可能ですか?
A.構造体の状態が良好で、基礎がしっかりしていれば可能です。ただし、腐食や傾きがある場合は建て替えの方が安全です。また、本編でも紹介しましたが、旧耐震基準(1981年以前)の建物の場合は、建て替えをおすすめしています。
Q5. 建て替えとリフォーム、どちらが資産価値に有利?
A.一般的に建て替えの方が評価は高いですが、リフォームでも耐震や断熱を整えれば、十分に資産価値を保てます。
まとめ|「どちらが得か」ではなく「どちらが合うか」
建て替えとリフォームには、それぞれの強みと制約があります。 家の状態・家族の暮らし方・資金計画を総合的に見て、“自分たちに合うほう”を選ぶことが正解です。
家を新しくすることが目的ではなく、「これからの暮らしを整えること」が本来の目的。 焦らず、少しずつ検討を進めていきましょう。