1月も終わりを迎え、一年で最も寒さが厳しい2月がやってきます。朝起きて布団から出た瞬間、フローリングのあまりの冷たさに思わずつま先立ちで歩いてしまう、そんな経験はありませんか? スリッパが手放せない冬の暮らしを変える鍵は、実は「床材の種類」にあります。
今回は、リフォームで人気の「無垢材(むくざい)フローリング」について、本当に冬でも暖かいのか、メンテナンスは大変ではないのかといった疑問を解消しつつ、足元の冷え対策に効果的な「浮造り(うづくり)」という仕上げ方法についてもご紹介します。
今回も本記事では、1級建築施工管理技士の現場監督・福田がポイントを詳しく解説します。
なぜ家の床はあんなに冷たいの?その犯人は「空気」の有無でした
まず、一般的な住宅で使われているフローリングがなぜ冬場にヒヤッとするのか、その理由からお話しします。多くの家で採用されているのは「複合フローリング」 と呼ばれるものです。これは合板(ベニヤ板)の表面に、木目をプリントしたシートや薄い板を張り付けた工業製品です。表面が硬くコーティングされているため、触れた瞬間に足の裏の熱を一気に奪ってしまいます。これを専門用語で「熱伝導率が高い」と言います。
一方で、今回おすすめする「無垢材フローリング」 は、丸太から切り出した自然の木そのものです。木材の内部には、無数の細胞があり、そこには空気がたっぷりと含まれています。空気は熱を通しにくい性質を持っているため、断熱材のような役割を果たしてくれます。そのため、無垢材に触れても体温が奪われにくく、「ヒヤッ」とせず、ほんのりとした温もりを感じることができるのです。
現場監督 福田からのアドバイス①
「無垢材ならなんでも暖かい」というわけではありません。木の種類によっても温かさは変わります。例えば、オーク(ナラ)やチークといった「広葉樹」は硬くて傷つきにくい反面、空気が少なめで少し冷たく感じることがあります。
冬の暖かさを優先するなら、スギやパイン(松)といった「針葉樹」が断然おすすめです。これらは柔らかく空気をたくさん含んでいるため、靴下を脱いで裸足で歩きたくなるほどの心地よさがありますよ。
凸凹が気持ちいい!冷え性の方にこそ知ってほしい「浮造り(うづくり)」仕上げ
<当社施工事例(無垢床/浮造り仕上げ)>
無垢材にするだけでも十分な効果がありますが、さらに足元の冷えを解消したい方にぜひ知っていただきたいのが「浮造り(うづくり)」 という加工方法です。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは木の表面を専用のブラシでこすり、柔らかい部分(夏目)を削り取って、硬い年輪の部分(冬目)を浮き上がらせる伝統的な技法です。
なぜこのデコボコした床が冷えに良いのでしょうか。平らな床だと足の裏全体がペタリと密着してしまいますが、浮造りの床は凹凸があるため、足の裏との間にわずかな隙間(空気の層)が生まれます。この空気層がクッションとなり、床の冷たさを直接伝えにくくしてくれるのです。
また、歩くたびに足の裏が適度に刺激されるのも大きなメリットです。青竹踏みとまではいきませんが、この心地よい刺激が血行を良くし、結果として足元がポカポカしてくるという効果も期待できます。実際に浮造りの床にリフォームされたお客様からは、「冬でもスリッパを履かなくなった」「足触りがサラサラしていて夏も気持ちがいい」といった感想をよくいただきます。
傷や汚れは「味」になる。恐れずに付き合うメンテナンスの真実
<イメージ:傷んだ複合フローリング>
無垢材へのリフォームをためらう最大の理由として、「手入れが大変そう」「水に弱そう」という声をよく耳にします。たしかに、ウレタン塗装でガチガチに固めた複合フローリングに比べれば、水シミができやすかったり、柔らかいスギ材・パイン材などは物を落とせばすぐに凹んだりします。
しかし、これは考え方次第でメリットにもなります。複合フローリングの場合、傷がつくと下の合板が見えてしまい、それは単なる「劣化」となりますが、無垢材の場合は傷がついても中身まで同じ木です。その傷が馴染んでいくと、ヴィンテージ家具のような「経年変化(味わい)」になります。
普段のお手入れは、掃除機やフローリングワイパー(ドライタイプ)で十分です。もし水をこぼしてしまったら、すぐに乾いた布で拭き取れば問題ありません。過度に神経質になる必要はなく、ジーンズや革製品のように「使い込んで育てる」感覚で付き合えるのが無垢材の良いところです。
現場監督 福田からのアドバイス②
柔らかい無垢材の床に物を落として「凹み」ができてしまったときは、慌てずに試してほしい裏技があります。凹んだ部分に濡らしたティッシュや布を置き、その上からアイロンを数秒当ててみてください。
木が水分を含んで膨らもうとする力と熱の力で、驚くほど凹みが元に戻ります。これは木の復元力を利用した方法で、複合フローリングにはできない、無垢材ならではの修復術です。
気になる費用感とリフォームの進め方
では、実際にリフォームするにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。一般的な6畳の部屋を例に挙げてみましょう。
材料費だけで比較すると、一般的な複合フローリングは1平方メートルあたり6,000円~8,000円程度ですが、無垢材(スギやパインの普及品)は8,000円~12,000円程度が目安となります。ものすごく高価なイメージがあるかもしれませんが、選ぶ樹種によっては複合フローリングとそこまで大きな差はありません。
複合フローリング 無垢材(スギやパインの普及品) 1平方メートルあたりの費用の目安 6,000円~8,000円程度 8,000円~12,000円程度
工事費込みの総額で考えると、6畳一間で10万円〜18万円程度が相場となります。ただし、ここで注意が必要なのは工事の方法です。今の床をすべて剥がしてから新しく張る「張り替え工法」は、廃材処分費や手間賃がかさみます。コストを抑えたい場合は、今の床の上に新しい床材を重ねて張る「重ね張り(カバー工法)」が有効ですが、床の高さが上がってしまうというデメリットもあります。
現場監督 福田からのアドバイス③
重ね張りリフォームをする際、もっとも注意すべきなのが「ドアの開閉」です。床が15ミリほど高くなることで、ドアの下端が床に擦ってしまい、開かなくなるトラブルが意外と多いのです。
この場合、ドアの下をカットする加工が必要になったり、廊下との段差を解消するための見切り材(スロープ)が必要になったりします。単に床を貼るだけでなく、建具との兼ね合いまでしっかりチェックしてくれるリフォーム会社を選ぶことが失敗しないポイントです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 無垢材は床暖房に対応していますか?
A. はい、対応している商品もあります。ただし、無垢材は熱による乾燥で反りや隙間が生じやすいため、「床暖房対応」と明記された特殊な処理が施された無垢材を選ぶ必要があります。一般的な無垢材を床暖房の上に使用すると、大きく変形する恐れがあるため注意が必要です。
Q2. 定期的なワックスがけは必要ですか?
A. 表面がテカテカするような一般的な樹脂ワックスは、木の呼吸を止めてしまうため使いません。その代わり、1年に1回程度、浸透性の自然塗料(オイル)を塗ることをおすすめしています。汚れを落としつつ油分を補給することで、木が長持ちし、美しい飴色に変化していきます。
Q3. ペットを飼っているのですが、無垢材でも大丈夫ですか?
A. ペットの足腰のためには、ツルツル滑る合板よりも、グリップの効く無垢材(特に浮造り)の方が負担が少なくおすすめです。ただし、爪によるひっかき傷は確実に増えますし、おしっこの失敗などはシミになりやすいです。「傷も思い出」と割り切れる方にはおすすめですが、汚れにくさを最優先する場合は、ペット対応のクッションフロアなどを検討したほうが良いでしょう。
Q4. 季節によって床に隙間ができると聞いたのですが本当ですか?
A. 本当です。無垢材は呼吸をしており、湿気の多い夏は膨らみ、乾燥する冬は縮みます。そのため、冬場は板と板の間に名刺1枚分ほどの隙間ができることがありますが、これは木が生きている証拠であり、調湿効果を発揮している印です。欠陥ではありませんのでご安心ください。
まとめ
<当社施工事例(無垢床/浮造り仕上げ)>
無垢材フローリングは、単に見た目が良くなるだけでなく、冬の寒さを和らげ、快適な室内環境を作ってくれる機能的な建材です。特に「浮造り」の床は、足裏への当たりが優しく、冷えが気になる方には最適な選択肢と言えるでしょう。
傷やメンテナンスについての不安もあるかと思いますが、手をかければかけるほど愛着が湧くのが自然素材の良いところです。「冬でも素足で過ごせる家にしたい」「年月とともに味わい深くなる部屋にしたい」とお考えの方は、ぜひ一度、無垢材の質感をショールームなどで体感してみてください。
現場監督として一つだけお伝えしたいのは、床は家の中で一番体が触れている時間が長い場所だということです。だからこそ、少しだけこだわって選ぶことで、日々の生活の質がぐっと上がりますよ。