リフォームは「見た目」だけでなく「見えない空気」も変えるチャンス
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家をリフォームするとき、キッチンを新しくしたり、リビングを広くしたりと、目に見える部分をどうするか考えるのはとても楽しいですよね。でも、長く快適に住み続けるために絶対に忘れてはいけないのが、「目に見えない空気」のデザインなんです。
今の家で、「冬は足元がスースーして寒い」「夏は2階がムワッと暑い」「窓の結露や押し入れのカビがひどい」と悩んでいませんか?実はそれ、単に家が古いからというだけでなく、換気や断熱の不足が大きな原因かもしれません。
大規模な戸建リフォームは、間取りや内装をきれいにするだけでなく、今の新築住宅と同じような快適な空気環境を手に入れる大チャンスです。この記事では、最近注目されている「第1種換気」という仕組みと、優れた換気システム「澄家(sumika)」をリフォームで導入するための条件について、順を追ってわかりやすく解説していきます。
今回も本記事では、1級建築施工管理技士の現場監督・福田がポイントを詳しく解説します。
今さら聞けない?換気システム「第1種・第2種・第3種」の違い
家の換気システムには、外の空気を取り入れる「給気」と、室内の汚れた空気を外に出す「排気」の方法によって、大きく3つの種類があります。
まず、日本の一般的な住宅で一番多く使われているのが「第3種換気」です 。これは、トイレやお風呂についている換気扇などの機械で強制的に空気を外に出し、壁についている給気口から自然に外の空気を取り入れる方式です 。仕組みがシンプルで費用も安いのがメリットですが、冬は外の冷たい空気がそのまま入ってくるので、どうしても部屋が寒くなりやすいという弱点があります。
次に「第2種換気」ですが、これは機械で空気を無理やり押し込んで、自然に隙間から空気を外へ押し出す方式です 。外からチリやホコリが入るのを防ぐため、主に病院の手術室や工場のクリーンルームなどで使われていて、普通の住宅で使われることはほとんどありません。
そして、今リフォームでも注目を集めているのが「第1種換気」です。これは、給気も排気も両方とも機械を使って計画的にコントロールする方式です 。空気の通り道をしっかり管理できるので、部屋ごとの温度差や湿度の調整がしやすく、家全体を快適に保つことができます 。せっかくリフォームして断熱材をしっかり入れても、換気口から冷たい空気がドンドン入ってきてはもったいないですよね。だからこそ、冷暖房の効率を下げない第1種換気が選ばれるようになっているんです。
次世代換気システム「澄家(sumika)」とは?
床下ダクト給気式(澄家方式)<出典:株式会社マーベックス>
第1種換気の中でも、特におすすめしたいのがマーベックス社が作っている「澄家(sumika)」というシステムです。澄家には、他の換気システムにはない大きな特徴がいくつかあります。
一番の特徴は、天井ではなく「床下」に機械を置いて、床の吸気口から空気を取り入れる「床下ダクト給気式」という仕組みを採用していることです 。暖かい空気は上に、冷たい空気は下に行く性質があるので、足元からじんわりと新鮮な空気を届けることで、部屋の上下の温度ムラを少なくしてくれます 。冬場の足元の底冷えが和らぐのは、とてもうれしいポイントですよね。天井にボコボコと換気口がつかないので、お部屋の見た目がすっきりするのも魅力です 。
もう一つのすごいところが「熱交換気」という機能です。冬、せっかく暖房で暖めた空気をそのまま外に捨ててしまうのはもったいないですよね。澄家は、外に捨てる空気の熱だけを回収して、新しく入ってくる外の冷たい空気を温めてから部屋に入れてくれるんです。この熱を交換する効率がなんと90%以上(機種によります)と非常に高く、冷暖房の無駄を大きく減らして光熱費の節約に貢献してくれます 。
また、換気システムで意外と面倒なのがフィルターのお手入れですが、澄家は機械が床下にあるので、床のフタを開けるだけで簡単にフィルター交換ができます 。天井の換気扇を掃除するために、わざわざ脚立を持ってきて上を向いて作業する、という危険で面倒な手間が省けるのは、毎日の生活の中でとても大きなメリットになります 。
【重要】リフォームで「澄家」を導入するための条件とハードル
<スケルトンリフォームイメージ>
ここまで読むと「うちのリフォームでもぜひ入れたい!」と思うかもしれませんが、実はここからが重要な話です。澄家のような高性能な換気システムは、既存の換気扇をポンと取り替えるような感覚で後付けすることはできません。戸建リフォームで導入するには、いくつかクリアしなければならない条件があります。
まず一つ目の条件は、床下や天井裏にダクトを通すための「大掛かりな工事」が必要になりやすいということです。澄家は床下にユニット本体を置き、そこからダクトを通じて新鮮な空気を各部屋に供給する仕組みになっています 。そのため、基本的には家を骨組みに近い状態にする「スケルトンリフォーム」のような規模の解体工事を想定しておくのが一番確実です。
ただし、絶対にすべての床や天井を剥がさないと導入できない、というわけではありません。もし床下に人が潜って作業できるスペースがあったり、配管を通すルートだけ天井を部分的に解体したりすることで、うまく施工できるケースもあります。家の構造や状態によっては部分的な解体と補修でいける可能性も十分にありますので、まずは建物の状況を見てもらうことが大切ですね。
とはいえ、水回りの設備を入れ替えるだけ、壁紙を張り替えるだけといった、表面的なリフォームの「ついで」にパッと導入できる設備ではないということは覚えておいてください。
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【建て替え vs リフォーム】どっちが得?費用・工期・メリットを徹底比較
[現場監督]福田からのアドバイス①
換気システムを入れるなら、間取りを大きく変えたり、耐震補強を行ったりするような、家全体をまるごとやり直すフルリノベーションのタイミングが唯一のチャンスだと思ってください。後から『やっぱり入れたい』と思っても、もう一度床や壁を壊すことになってしまいますからね。
二つ目の条件は、床下や天井裏に「配管を通すためのスペース(懐:ふところ)」が十分にあるかどうかです。太いダクトを家中に通すためには、床と地面の間、あるいは天井と屋根の間にそれなりの空間が必要です。昔の家は床下が低く作られていたり、天井裏のスペースが狭かったりすることがよくあります。いざ解体してみたら配管が通せず、泣く泣く導入を諦めたり、配管を隠すために天井を少し低く下げたりする工夫が必要になることもあります。
三つ目の条件は、家そのものの「気密性」を劇的に高める工事をセットで行うことです。気密性というのは、簡単に言うと「家にどれくらい隙間がないか」を表すものです。専門用語で「C値(相当隙間面積)」と呼びますが、この数値が小さいほど隙間がなく優秀な家ということになります 。 いくら澄家のような高性能な換気システムを入れても、家が隙間だらけのスカスカな状態だと、機械が引っ張った空気が隙間から漏れてしまい、計画通りに空気が流れません 。ストローに穴が開いていると、いくら吸ってもうまくジュースが飲めないのと同じです。
[現場監督]福田からのアドバイス②
リフォームで第1種換気を活かすなら、断熱材をしっかり入れ替えるだけでなく、窓を高性能なものに替えたり、職人が隙間を丁寧に塞いだりする『気密改修工事』が絶対に欠かせません。カタログの性能だけでなく、家全体としての性能バランスを整えることが成功の秘訣ですよ。
導入前に知っておきたいメリット・デメリット
<当社施工事例>
導入には高いハードルがありますが、それを乗り越えた先には大きなメリットが待っています。最大のメリットは、家中の温度差が少なくなり、どこにいても快適に過ごせることです 。お風呂上がりや夜中のトイレで「寒い!」と震えることが減り、ヒートショックの予防にもつながります。また、外の空気をフィルターできれいにしてから取り入れるので、ホコリなどが家の中に入るのを防ぐことができます。家の中の湿気も計画的に排出されるため、窓の結露や壁の中のカビを防ぎ、結果的に家自体を長持ちさせることにもつながります 。
一方で、デメリットや注意点も知っておく必要があります。一番のネックはやはり「費用」です。新築の家で澄家を導入する場合、一般的に40万〜60万円程度かかると言われています 。しかし、リフォームの場合はこれだけでは済みません。床下や天井に配管を通すための通り道を新しく作ったり、古い柱を避けながら複雑な工事をしたりと手間がかかるため、換気システムとそれに伴う造作工事の総額費用は大きく膨らむ可能性があります。 また、どんなに優れた機械でもメンテナンスは必要です。年に2回程度は、床下にあるフィルターのゴミを掃除したり、交換したりする手間がかかることは覚えておいてください 。
[現場監督]福田からのアドバイス③
初期費用はかかりますが、これから何十年も住み続けることを考えれば、毎日の快適さと光熱費の節約効果で十分に元が取れる投資だと言えます。ただ、ご自身の予算と、リフォームで何を一番大切にしたいかの優先順位をしっかりと整理してから決断することが大切ですね。
よくある質問(FAQ)
ここで、リフォームで換気システムを検討される方からよくいただく質問をまとめました。不安な点は事前に解消しておきましょう。
Q1. 築40年以上の古い家でも、澄家を導入できますか?
導入できる可能性はありますが、まずは建物の調査が必要です。
古い家は床下の高さが足りないことが多く、基礎の作りによっては配管が通せない場合があります。また、気密性を高めるための大規模な断熱・気密改修が必須となるため、建て替えに近い規模のフルリノベーションになる覚悟が必要です。
Q2. 水回りとリビングのリフォームをする予定です。ついでに換気システムも第1種にできますか?
残念ながら、部分的なリフォームの「ついで」に導入するのは非常に困難です。
家全体に空気を循環させるため、工事をしない部屋の床下や天井裏にも配管を通す必要があるからです。部分リフォームの場合は、今ある壁付けの換気扇(第3種換気)を新しいものに交換するなどの対応をおすすめします。
Q3. 澄家を入れると、工事の期間はどれくらい長くなりますか?
すでにスケルトン状態(骨組み)にするフルリノベーションを予定しているのであれば、換気システムの工事だけで大幅に工期が延びることはありません。ただし、配管の計画や気密処理の丁寧な施工が必要になるため、通常の工事に比べて1〜2週間程度は余裕を見ておいたほうが安心です。
Q4. もしフィルターの掃除をサボってしまったらどうなりますか?
フィルターが目詰まりすると、家の中に十分な空気が入ってこなくなります。すると、換気不足で嫌なニオイがこもったり、湿気が逃げずに結露やカビが発生しやすくなったりします。また、機械に無理な負担がかかって故障の原因になったりすることもあるので、定期的なお手入れは必須です。
まとめ:換気システムは「リフォームの規模」とセットで考えよう
<当社施工事例>
今回は、戸建リフォームで第1種換気「澄家」を導入するためのポイントについてお話ししました。澄家は、家中の温度を均一に保ち、きれいな空気を循環させてくれる素晴らしいシステムです。しかし、その性能を十分に発揮させるためには、家を骨組みからやり直すような大規模な解体工事や、配管スペースの確保、そして隙間のない高気密な家づくりが絶対に必要不可欠です 。
リフォームを考えるときは、「どんな換気システムを入れたいか」だけでなく、「自分が予定しているリフォームの規模で、それが実現可能なのか」をセットで考えることがとても大切です。
最後に、私からお伝えしたいのは、「家づくりはバランスがすべて」ということです。最新の設備を入れたからといって、必ずしも快適になるとは限りません。家の土台となる構造や断熱性、気密性がしっかり整ってこそ、機械はその真価を発揮します。これからリフォームの計画を進める際は、ぜひ目に見えるデザインだけでなく、「見えない空気や温度をどうデザインするか」も一緒に考えてみてくださいね。
まずは今の家の状態を知るために、ご自宅の図面を用意して、どのようなリフォームが可能なのか専門家に相談してみてはいかがでしょうか?